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April 28, 2011

粋と野暮と気障 - Apple雑感

Macとの出会いは1988年、大学2年の時だった。
 サークル一年後輩のおれカネゴンが入学間もなく購入したのが、確かMacintosh SE/30だったと思う。

 ローン地獄にのたうちまわる彼の極貧生活は、はたで眺めてる分にはとっても楽しめたのだが(鬼)、それでも愛機を熱く語る時の彼は本当に幸せそうで、うらやましかった。

 当時の僕には使い途の想像がつかず、自分が買うなど思いもよらなかったが、彼の熱愛ぶりを間近に見続けたので、僕の中では「PC=Mac」という図式ができあがった。


大学を出て塾講師をしてた時期がある。おれカネゴンのMac布教活動の影響が及んでいた塾だったので、同僚の多くがMac使いだった。僕も彼らのマシンをときどき借りて問題を作ったりしていた。基本操作を覚えたのは、この職場だった。

95年だっただろうか、おれカネゴンがお古のColor Classic IIをタダで譲ってくれた。もはや彼は極貧ではなかった(笑) 僕が初めて所有したPCだ。
 Nifty Serveに加入してパソコン通信をはじめた。通信機器として使うようになると、PCなしの生活はもう考えられなくなった。

 Newtonにあこがれてたのもこの頃。粋なインターフェイスに惚れてた。

 PC/AT互換機(という言葉があったのだよ>デジタルネイティブ諸君)には一切興味がなかった。

ところがところが。

 98年にNZに行くためにノートPCを買う段になって、困ったことが判明。NZのMac普及率は1%未満らしいのだ。

 断腸の思いでMacはあきらめた。だから僕が初めてお金を出して買ったマシンは、Win95搭載Sharp Mebiusだ。Macと比べてなんて安いんだろうと驚いた。
 Win98リリース直前だったので無料アップデート権がついていたのだが、このアップデート作業がスムースに行かなくていきなりMicrosoft電話サポートの世話になる。暗雲立ちこめまくりのWindows修行第一歩。Macが懐かしかった。

 NZにわたってからも、Mebiusは不具合を起こしまくりで、本当に泣かされた。HTMLを覚えて最初の二つか三つのサイトを作ったのもこのPCだし、同時に購入した初めてのデジカメ画像をいじることを覚えたのもこのPC。初めてウィルスに感染して泣きながら対処したのもこのPC。思えばちゃんとしたパソコン技術は、みんなこのマシンで覚えた。だから、もっと思い出深くてもいいようなもんなんだけど、実際にはまともに動いてくれないマシンで、いつもののしりつつMacを懐かしがっていた記憶しか残っていない。

今使ってるHP Compaq 610は、通算5台目のWinマシンだ。Win歴の方がMac歴よりもはるかに長くなっちまった。

 この間に、潰れそうだったAppleは奇跡的な復活をとげたどころか、世界制覇の階段を駆け上り始め、NZでもMacは珍しくなくなった。普及初期には、もう数年早かったら、最初っからPowerBook買ってきたのにと、うらめしく眺めていた。
 また、CPUがIntelになってWindowsが動くようになった。
 さらに価格もどんどん下がり始めた。Win機と比べるとさすがにまだ高いが、でもWindowsも使えるし、僕のように日本語アプリと英語アプリを混用する人間には、言語問題を起こしにくいOSの方がありがたいわけで(Win7もまだ文字化け起こすんだよねぇ)、そんなことを考えると今のMacは決して高くないと思う。

 ついに、NZでもMacの買い時がきたようだ。

ところが……。

 なぜか、ここ数年のApple製品には、どうも食指が伸びない。

 一年半ほど前に、iPod nanoを手に入れた。一世代前のビデオカメラ付きのヤツ。僕にとっては初めてのMP3プレイヤーで、なるほどこりゃ便利だわいと思った。
 だが、どうもときめかない。むしろ、使いづらくてイライラする場面の方が多い。愛せない。

 昔のApple製品とは、何かが違う。なんだろう、何が違うんだろう??? デザインは確かに昔より良くなってるし、昔のAppleを感じさせるインターフェイスも残ってはいるのだが、それにしても……。

 iPodの寿命が来たら、Sonyウォークマンに買い換えるような気がする。
 iPhoneにもiPadにもさわってみたが、まったくときめかなかった。Newtonとは全くの別物に変わり果てていた。
 Macも理屈ではお買い得だと感じるものの、また文字化けと戦うのを承知で次もWindows機を買ってしまいそうな気がする。

 あれほど惚れていたMac、Apple製品なのに、なぜだろう?
 ずっとひっかかっていた。

昨年暮れに脚を折った直後、やることがないので杉浦日向子の本を枕元に積み上げて乱読した。
 そしたらある本の中に、あっさりと答えが書いてあった。ちょっと長くなるが引用する。

 粋と野暮の他に、キザがあります。一番嫌われていたのがキザであって、キザになるくらいなら野暮でいたいといいます。

 キザは気障と書きます。(中略)

 服装がきまりすぎるのも気障です。かっこいいことばがきまりすぎた時も気障です。つまり、あまりにも場にマッチしすぎるのが気障の最たるものです。

 気障からはずすことが粋の第一条件です。近代以降とか西洋の粋、シックなあり方は、わりときまってしまったことをほめますが、江戸の人たちが同じ状態に接したら、きっと悪口雑言をあびせかけたのではないかと思います。

 野暮は、ちょっとした工夫で粋に転化することができますが、気障は永遠に気障のままです。そういったところから嫌われていたようです。

 (『江戸へようこそ』ちくま文庫




 なるほど、これだ。僕が最近のApple社の製品に感じていたのが、ずばりコレ。
 昔のMacは、粋だった。
 でも今のApple製品は、キザだと感じる。

 いうまでもないが僕自身は粋な人間じゃないし、江戸っ子でもない。
 でもキザは確かに嫌いだ。ミステリーは読むが、ハードボイルドは背中がむずがゆくなるので苦手だ。二枚目スターより、二枚目半の方が好きだ。宝塚くらいになると、逆に一回観に行ってみたいような気もするが、これは「怖いものみたさ」という別の心理だろう(笑)

 おっと、脱線した。
 ま、とにかく、この一文を読んで、なるほどそういうことかと、完全に腑に落ちてすっきりしたのであった。
 関西人の血をひく岡山出身の僕が、なんで江戸っ子の感性に共感するのかという別の疑問が出てくるのだが、まぁそれはこの際棚に上げておくことにしよう。

新型MacBookProは確かにちょっとあらがいがたいようなスペックを持ってるので、正直ずっと横目でチラチラと見てるんだけど、さて、購入にいたるかどうか、自分でもよく分からない。
 なんせ買ったはいいが、「やっぱキザだよ、このマシン……」ってなったら目も当てられない……。野暮なWinマシンは、安心感があるんだよな(笑)

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1. 【映】『アルマゲドン』はウィリスの代わりに……  [ Ryu's Logbook 別冊 ]   October 06, 2011 17:43
■下らんネタを書く前に、まずはSteve Jobsに合掌。  この4月に「粋と野暮と気障 - Apple雑感」に書いたように、喜んで使ってたMacはJobs不在時の製品で、彼の息のかかった製品はiPod nanoに ...

この記事へのコメント

1. Posted by うりかねぐん   April 28, 2011 23:59
いやーそんなに布教して回っていたとは自分でもすっかり忘れてました。お恥ずかしや。
Apple製品のいいところは、もうiPhoneやiPadに移ってしまった感がありますね。iPadは本当に楽しいです(持ってないけど)が、それでがんがん仕事する感じではないので、どうしたものでしょう。外付けキーボード付けたら違うかもしれないですが。
2. Posted by Ryu   April 29, 2011 08:24
君が忘れても、僕らまわりの連中は忘れない>君の布教活動

MacよりiPadの方が良いの?
そっか。
iPadも、何度か触らせてもらったけど、僕好みのアプリじゃなかったせいか、別に何も感じなかったなぁ(おっしゃる通り、ガンガンタイピングして仕事出来るマシンじゃないから、最初からほとんど興味持ってなかったってのも大きいけど)。
となると、Macはもう全然ダメかも。

Facebookには、某先輩が「ここ2年くらい行きに戻ってきた印象があるから、MacBookProでイメージ変わるかも」とアドバイスくれたんですが、さて、どんなものか……。

ま、とりあえず、MacBookProスルーしないで、視野に入れ続けておきます。
3. Posted by みゃおやま   April 29, 2011 09:22
コンピューターと言えば、Macしか使ったことないワタクシです(どうしても必要な時 Win をちょっとだけ使うことはありますが)。ワープロ(コンピューターじゃないよ)を背負ってアメリカの大学院に行ったけれど、コンピューターラボというところにいくと、小さいごみ箱みたいなMacがいっぱい並んでいたのでした。大きいのもあったけどね。

気障、というより、手のかからない子供になったというか、手続き代行してくれるサービスマン、みたいな。だからこそ普及してるんだろうけどね。アメリカにいるころは(就職してからPowerBook買った)それなりにトラブるので、いろいろいじくったりしてましたが、今はほぼ、テレビだの電子レンジなどの家電製品的使い心地…という感じ。
4. Posted by Ryu   April 29, 2011 10:40
Macの進化は残念ながら知らないんですが、Winもこの13年の間に手のかからない家電のようになりました。

13年前は、トラブルとかトラブらない以前に、Win95やWin98の完成度がMacOS(僕は漢字Talkまでしか知りませんが)と比べてお話にならない低くてユーザインタフェースが全然ダメだったんですが、Win7はもう家電レベルになりましたね。
積極的にMacOSに乗り換えようという気がなくなってきました。

ま、MacにしろWinにしろiOSにしろAndroidにしろ、OSが何かってのを意識しないで使えるようになってきてるってのは、良いことです。

でも個人的にはMac互換機が買えた時代が懐かしい。
5. Posted by Nori   April 29, 2011 15:06
メビウスって、あの丘の上の家で触ってたあのマシンでしょうか。懐かしいですね。たしかに最近のMacは以前のような操作性の優位さや洗練ぐあいより、単なるファッションに走ってるような気がしますね。うちの学生でもせっかく持ってるのにAppleは見限ってWindows入れて使ってるのがぼちぼちいますね。はじめてみた時はなんでMacなのにOSがWindows?と驚きましたが。
6. Posted by Ryu   April 30, 2011 09:28
そうです、そうです、あのとき使ってたのが、ポンコツMebiusでした、懐かしいっすねぇ。
なんのトラブルだったか忘れましたけど、Noriさんにも何かシューティングしていただいたような覚えがあります、その節はお世話になりました。

最新のMacOSはちゃんと触ってないんで、優位性、洗練具合の差はきちんとは把握してないんですが、Win7は十分なレベルに来たなって気がします。
細かくカスタマイズするってことまで考えると、きっと今でもWinの方が自由度が高いんだろうと思いますし。

しかしMac買って、MacOS見限ってWindows機として使うってのは、なんとも豪儀な話ですね。
贅沢だ。
粋というより、カブキモノですね。
実は僕にはぴったりかもしれない(笑)
じゃ、新型MacBookPro買って、WinVistaをメインOSとして使うか。
あ、MEってのもかなりカブいてるかもしれない。

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H. Ryu Takahashi
オリジナルの『Ryu's Logbook』を、純粋な「航海日誌」にして、2005年7月以降は雑文をこっちに移しました。
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